M-1グランプリを全部観て選ぶ歴代漫才ベスト10

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最近ようやくAmazonのプライム会員になった私にとってうれしいことのひとつは、Amazonプライム・ビデオで歴代のM-1グランプリ決勝をすべて観られることである。2020年2月現在、01年の第1回大会から18年の第14回大会までの本編と、15年、17年、18年の敗者復活戦および16年の準決勝を鑑賞できる。

今回は、Amazonプライム・ビデオで観られる過去14大会と、リアルタイムで観た2019年の分をあわせ、いままでの全15回のM-1グランプリ決勝で披露された漫才のなかからベスト10を選んでみた。

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第10位 ジャルジャル『ピンポンパンゲーム』

第10位は、第13回大会(’17)の第1ラウンドで披露されたジャルジャルの『ピンポンパンゲーム』である。

「変な校内放送をやるなら盛り上げてくれ」という導入から、謎の遊び「ピンポンパンゲーム」が始まる。ゲームのルールの周知を兼ねた序盤こそスロースタートだが、中盤から終盤にかけての盛り上がりがとても楽しい漫才である。

私が好きなのは、「ピン!」と「背筋伸びてるやん!」を繰り返し応酬するくだりだ。ふたりの顔の表情もおかしいし、「この意味不明な遊びはいったいなんなんだろう?」と冷静な疑問が湧いてきて、それがまた笑いを誘う。

会場も盛り上がっていたが、点数は思ったほど伸びず残念だった。しかし、インパクトという点ではこの年いちばんのネタだったと思う。

第9位 パンクブーブー『陶芸家』

第9位は、第9回大会(’09)の最終ラウンドで披露されたパンクブーブーの『陶芸家』である。

M-1の歴代の漫才のなかでものすごく印象に残っていたというわけではないが、あらためて見返してみるとやはり文句なしにおもしろく、9位にランクインとなった。

ボケの佐藤が「陶芸家に弟子入りしたい」と言い、ツッコミの黒瀬が陶芸家の先生を演じるコント漫才である。ネタの構造やボケの性質的にはアンタッチャブルと少し似ているような気がするが、大きく違うのはツッコミのタイプだろうか。アンタッチャブルよりとがっていないぶん、かわいらしさが感じられる。

弟子はとらないと言い張る黒瀬に、佐藤が「とらないんじゃなくて、本当はとれないんじゃないですか?」と煽り、 それにたいして黒瀬が「なんだと?よし、じゃあ弟子をとってやろうじゃないか、とはならない」とノリツッコミ(?)をするくだりがとくに好きだ。「ならないの巻」もいい。

このネタでパンクブーブーは第9回大会の王者に輝いた。納得である。

第8位 スリムクラブ『葬式』

第8位は、第10回大会(’10)の最終ラウンドで披露されたスリムクラブの『葬式』である。

4分という時間制限のなかでテンポのいい漫才が求められがちなM-1において、きわめてスローテンポで、「間」そのものをボケとして使う漫才でインパクトを残したスリムクラブ。当時無名だったため、多くの人にとって初遭遇だった第1ラウンドのほうが衝撃度は高かったはずだが、インパクトが落ちるというハンデをものともしない最終ラウンドのネタが『葬式』だった。

「葬式での振る舞い方がわからないから教えてほしい」という導入はありがちだが、受付のところでずっと停滞したまま爆笑をかっさらうスタイルはほかではなかなか見られない。「この状況でね、民主党のこと考えるの、民主党にもいませんよ」は、何度観ても強烈なフレーズで笑ってしまう。

当時最後の大会とされていた第10回大会。優勝はM-1の功労者ともいうべき笑い飯にゆずったが、もし最後の大会でなかったら彼らが優勝していたかもしれない。

第7位 かまいたち『自慢』

第7位は、第15回大会(’19)の最終ラウンドで披露されたかまいたちの『自慢』である。

ネタの完成度や本人たちの自信の度合いから言うと、第1ラウンドで披露された『UFJ』のほうが上かもしれない。実際出番が2番手でなければ、『UFJ』を最終ラウンドにとっておいた、という本人たちの談もある。

私は『UFJ』も大好きなネタだが、好きなゆえに何度も見すぎていたため、さすがにM-1決勝の舞台では鮮度が感じられなかった。それでももちろんおもしろかったわけだが、鮮度が高く、クオリティでも負けていないと感じられた『自慢』を7位に推すこととなった。

『となりのトトロ』を一度も観たことがないのが自慢だという山内が、いつものように己の持論の正しさを強弁していく漫才である。「トトロすらいらんのよ」はさすがのフレーズだが、そのあとの変なところで息継ぎをするボケがとくにツボだった。

19年がラストイヤーだったかまいたちだったが、優勝はミルクボーイにゆずる形となった。最終ラウンドだけで評価するなら、かまいたちに軍配があがると個人的には思っている。

第6位 アンタッチャブル『合格発表』

第6位は、第3回大会(’03)の最終ラウンドで披露されたアンタッチャブルの『合格発表』である。

第4回大会の王者アンタッチャブルだが、私がいちばん好きなのは第3回大会のこの漫才である。第1ラウンドの『ハンバーガーショップ』のネタよりも数段おもしろく、敗者復活戦からのしがってきたにもかかわらず、虎視眈々と2本目に本命ネタを残しておいたのかと思うとなかなかすごい。

大学の合格発表が題材のネタだが、掲示板に自分の番号がないと泣く柴田に対し、山崎が突然笑いだして「(柴田の手の紙を指して)持ってんじゃん」と番号があると主張するボケには毎回笑ってしまう。このボケが好きすぎて6位に選んだようなものである。

最終ラウンドではフットボールアワーと笑い飯を相手に1票も獲得できず3位に終わってしまった。このクオリティの漫才で1票も入らないとは、この年の三つ巴はとんでもないレベルである。

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第5位 笑い飯『鳥人』

第5位は、第9回大会(’09)の第1ラウンドで披露された笑い飯の『鳥人』である。

もはや説明不要の伝説的なネタ。哲夫が冒頭に説明する「タキシードを着た英国紳士みたいなやつ」というところで「鳥人」の映像が浮かび、そうなると笑い飯のふたりがちゃんと鳥人に見えるのだからすごいネタである。

いちばんおもしろいボケは序盤の「友達の証に、このタキシードの胸もとを開いて、人間の体と鳥の頭のちょうど境目を見せてあげよう」だと個人的には思う。映像的で、視聴者が想像しながら笑ってしまう強烈なボケである。

その後、いかにも笑い飯らしいしょうもないボケがいくつかあり、つまらないことはないし、それが個性だとも言えるが、ちょっともったいない気もする。とはいえ、終盤の「鳥森一」からの流れは最高で、島田紳助が100点を与えたのも納得の傑作漫才である。

このあとの最終ラウンドで『チンポジ』のネタをやり、パンクブーブーの前に散った笑い飯。この年に優勝していたら美しい流れだっただけに惜しかった。

第4位 チュートリアル『チリンチリン』

第4位は、第6回大会(’06)の最終ラウンドで披露されたチュートリアルの『チリンチリン』である。

これもまた伝説的な漫才である。こないだ自転車のベルを盗まれた、と話す福田を異常に心配する徳井。この冒頭の部分がじつはいちばん好きかもしれない。「いったん帰るか?」「ご両親に言うたんか?」「言わんほうがええ」「座るか?」などのくだりが妙に好きなのである。ボケの徳井の狂気の世界に徐々に入りこんでいく感じが気持ちいいのだろうと思う。

中盤以降もまったく勢いを落とさず独特の世界観を展開させ、終盤の「今日から俺がおまえのチリンチリンだ」で狂気が頂点に達し、圧巻の満票優勝となった。

歴代でもっとも納得感のあるM-1王者である。

第3位 笑い飯『奈良県立歴史民俗博物館』

第3位は、第3回大会(’03)の第1ラウンドで披露された笑い飯の『奈良県立歴史民俗博物館』である。

第5位に続いて笑い飯のランクイン。最初はひと組につき1本だけ選ぶ方針だったのだが、そうなると入れたいネタが入らないので方針転換した。

笑い飯の好きなところは、ありきたりな題材で漫才をやらないところだ。「店員と客」とか「彼女とのデート」みたいな設定はまず選ばないし、昔話をいじるとか子どものころの遊びが懐かしいみたいな話もしない。やらない、と頑なに拒んでいるようにすら見える。

『奈良県立歴史民俗博物館』も、ほかのだれもこんな題材でできないであろう漫才だ。「歴代民俗博物館」だけでもおもしろいのに「奈良県立」までついているだから完璧である。

冒頭の西田が演じる人形の動きと音楽で笑いはじめたら最後までノンストップ。ちょっと駆け足ぎみなのが玉に瑕だが、それがドライブ感を生んでいるのも事実でそれほどマイナスでもないだろう。

最終ラウンドは1票差でフットボールアワーに惜敗。その後のことも考えると、この年に優勝するのがベストだった気がしてならない。

第2位 ミルクボーイ『コーンフレーク』

第2位は、第15回大会の第1ラウンドで披露されたミルクボーイの『コーンフレーク』である。

決勝進出が決まってからYouTubeの公式チャンネルにあがっていた彼らの漫才の動画をあらかた観て、たしかにおもしろいとは思っていた。しかし、決勝であれほど大爆発するとは完全に予想外だった。

もちろんネタを見れば、それも納得のクオリティである。序盤の「コーンフレークはまだ寿命に余裕があるから食べてられる」から終盤の「生産者さんの顔が浮かばない」まで、ボケ(ツッコミというべきか?)の打率は10割といっていいレベルだったと思う。

漫才の型が決まっているので、観客が序盤でパターンを把握してからは、単純にいかにおもしろいフレーズを繰り出せるかという大喜利的な強さが必要だったと思うが、そこのハードルを悠々と超えてくるさまは本当にすごかった。

最終ラウンドのネタについてはかまいたち派だが、ミルクボーイの優勝になんら異論はない。

第1位 チュートリアル『冷蔵庫』

第1位は、第6回大会(’06)の第1ラウンドで披露されたチュートリアルの『冷蔵庫』である。

笑い飯に続いてチュートリアルも2本目のランクインとなった。おもしろいのだからしかたがない。

福田が冷蔵庫を買ったことをものすごく大げさな出来事としてとらえる徳井。あきらかにおかしな人間なのだが、変人には変人なりの世界があるのだろうと思わされる演技力があり、「冷蔵庫に異常な思い入れのある人」として見る者に違和感を与えることなく存在している点がすばらしい。

私が好きなくだりは、「なに冷やそうかなとか考えてんの?」と問われ、そんなこといちいち言うようなことじゃないと拒む福田に、徳井が「考えてることを発表するのが恥ずかしいんか!?」と迫力満点に迫るところである。私はわりと「考えてることを発表するのが恥ずかしい」と感じる人間なので(ブログなんてやっているわりに)、この場面は妙に胸にくるものがあった。

第1ラウンドの『冷蔵庫』、最終ラウンドの『チリンチリン』と、ここまでハイレベルな漫才を2本そろえてM-1決勝の舞台に用意できたコンビはチュートリアルのほかにいないのではないだろうか。私にとって歴代最高の王者である。

まとめ

以上が、私の考えるM-1グランプリ決勝の歴代漫才ベスト10である。

あまりひねりのない王道的なランキングになったのではないかと個人的には思っている(ブラックマヨネーズやサンドウィッチマンはないのか?という声は聞こえてきそうだが)。上位5本のうち4本が笑い飯とチュートリアルというのもバランスが悪いとは思いつつ、おもしろいのだからしかたないと許容することにした。

全体の感想としては、むかしよりいまのほうが漫才のレベルはあがっているな、というのがまず思うところである。スーパースターは出にくい時代かもしれないが、時代とともに芸人のみなさんはちゃんと進化している。今後のM-1グランプリではますますおもしろい漫才が披露されていくことだろう。

おまけ

M-1グランプリというコンテンツをより深く楽しむうえで欠かせない本がひとつあるので紹介したい。それはナイツ塙宣之による『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』である。これを読みながら観ると、M-1がさらに楽しくなるはずだ。