『ダウンタウンのごっつええ感じ』の好きなコントベスト10

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『ダウンタウンのごっつええ感じ』といえば、1991年から1997年までフジテレビ系で放送されていた伝説的なバラエティ番組である。そこで制作、放送されたコントはいまでも視聴に耐えうるものが多く、おそらくこれを超えるコント番組は今後も出てこないと思われる(たぶん)。

この番組のコントをいま観ようと思うなら、『THE VERY BEST OF ダウンタウンのごっつええ感じ』(全5巻、各3枚組) というDVDを入手するのがいちばんいい。1000本以上の作品からダウンタウンの2人が自ら厳選したコントが収録されている。

今回はこの『THE VERY BEST OF ダウンタウンのごっつええ感じ』 に収録されている作品のなから、私がとくに好きなコントを10本紹介したいと思う。読んだ方がDVDを購入するきっかけとなれば幸いである。当初はランキングにしようかと思ったが、順位が決められないので、タイトルを五十音順に並べて紹介する。

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1.大手長コウモリ白ムササビ殺人事件

大手長コウモリ白ムササビという奇妙な生き物(やたらとでかい)が殺人事件の被害者となり、刑事に扮する出演者たちが捜査に乗り出す。「殺人事件シリーズ」の第1弾。

警部(松本人志)とベテラン刑事(浜田雅功)のいる現場へ、聞きこみをしてきた刑事たち(今田耕司、東野幸治、板尾創路、ほんこん)がその結果を報告しにくる。まずは板尾が「昨日の夜の7時ごろ、隣の201の住人が大手長コウモリ白ムササビと子どもがキッスをしていたのかと聞いてくれと言っています」とよくわからないことを言い、ほかのメンバーもそれに負けじとボケをかましていく。

どこまで打ち合わせ済みなのかわからないが、おそらくは相当にアドリブを入れているであろうことがうかがえ、ダウンタウン以外のメンバーの実力を存分に楽しめるシリーズだ。

「これはまったく嘘の情報なんですが、“おれの手の長いうちは、あいつらの好きにはさせない”と言っていたそうです」

2.お見舞い

病気で入院している子ども(浜田)のもとへ、「世界1位の男」(松本)が励ましにやってくる、という話。

SPを引き連れてものものしく登場する松本だが、いったいなんの世界1位なのかまるでわからないことに、見ている側もついツッコミを入れたくなる作りになっている。なんのチャンピオンなのかは謎ながら、なにがどうあろうと、とにかく彼は世界1位なのである。母親役のYOUがこらえきれず、ずっと笑っていることがまた笑いを誘う。

「南米の主婦層のあたりじゃ、私を世界8位だと言っている男もいるらしい」

3.記者会見

「愛に賭けろ」というドラマの制作発表記者会見が舞台で、出演者が順番に自己紹介し、役柄と意気込みを述べていく。

最初のふたりはインテリア・デザイナー(浜田)とその恋人(篠原)という普通の設定なのだが、次の今田が「ふたりの恋路を邪魔する五つ子ちゃん役」を名乗り、そこからどんどんおかしな役柄が紹介されていく。

個人的には板尾と東野のパートがとくに好きだ。ふたりとも台詞のトーンや表情がすごくいい。もちろんオチの松本のカタストロフィーっぷりもさすがと言わざるをえない。

「主役がかわいがっている手長コウモリを風呂に入れる孫ギャル役のケンちゃんです」

4.サリンジャー

松本が「オートサリンジャー」というボートっぽい乗り物のインストラクターを演じ、客に乗り方を教えていく。

男女で差しこむ場所が違う「エアプラズマ」、機械をエキスメントさせる「エキスメントレバー」、200万ボルトの電気が流れている「バイラー」といったパーツでオートサリンジャーは構成されているようだ。こういう造語のセンスは松本人志の真骨頂である。

「女性がね、いるからオートサリンジャーはここにいま止まってるんですよ。それを思い出してください」

5.実業団選手権大会

剣道場のような場所で、なんらかの武道っぽい競技で今田と東野が対戦し、松本がその審判を務める。

今田と東野は真剣な表情で技らしきものを繰り出すが、いったいなにを目指す競技なのか、さっぱりわからない。そして謎のタイミングで松本によってめくられる得点表がシュールさに拍車をかける。

「1」→「ゑ」→「-180」
「1」→「 ☞ 」→「 🍎 」

途中、休憩のときに東野は味噌を舐め、今田もポップコーンかなにかを口にしている。いまで言うところの「もぐもぐタイム」である。

6.浸水家族

恋人のYOUの実家へ浜田が結婚の挨拶へ行く、という話。

YOUに案内されて浜田が玄関からなかに入ると、なぜか家中が脛くらいの高さまで緑色の水に浸かっている。出されたスリッパも水面に浮く始末だが、彼女の家ではどうやらこれがあたりまえな様子である。

こういう日常を異化させるコントもダウンタウンの得意技のひとつといえるだろう。まるで筒井康隆の短編小説のような味わいがある。

浜田はYOUの両親(父親が松本、母親が今田)と顔を合わせ、4人は水浸しの居間で流しそうめんを食べる。流しそうめんというチョイスがさすがだ。つかみきれなかったそうめんは緑色の水のなかへ流れ、あきらかに清潔ではない水に浸かってしまった麺を食べる姿が笑える。

7.世紀末戦隊ゴレンジャイ

戦隊もののパロディコントのシリーズ。自宅にいるYOUがドクロ仮面(浜田)に襲われているところへゴレンジャイの面々が助けにくるのだが、毎回5人の衣装がおかしいためにドクロ仮面に戦ってもらえない、というのが大筋の流れである。

シリーズ全体としては「まあまあ好き」くらいのコントなのだが、トップ10にまで食いこんだのは、第5回のアオレンジャイ(板尾)の衣装を見たときにお腹が痛くなるほど笑ったからである。となりにいる松本が板尾を見てずっと笑っているし、浜田のツッコミもいちばん力が入っていて楽しそうだ。ダウンタウンのふたりがそうなるのも納得のボケだと思う。

「ぼく、陸上やったんすよ。めっちゃ足速いんすよ。もっとはよならへんかなって」

8.挑戦者

舞台はボクシングのタイトルマッチ。チャンピオンの東野に対する挑戦者(松本)は、ヒヤキポリネキセサナモベ共和国出身のピヒョリレーナリ・ボリリレン。選手紹介ののち、共和国の国歌のテープが流れる。

その国歌というのが普通ではなく、松本と今田が好き勝手に謎の奇声を発しているというもの。途中あきらかな日本語なども混じりつつ、それが延々と続いて終わらないため、チャンピオンの東野もイラついている様子を見せる。東野以外のリング上のメンバーはこらえきれず、普通に笑いながら国歌を聴いている。

途中でズームアップされる、国旗に描かれたやたらと脚の多い生き物の下手くそな絵(おそらく浜田が描いたもの)もおもしろい。

9.日本の匠を訪ねて

「日本の匠を訪ねて」という番組のレポーターを務める浜田が、なんらかの工芸品の職人である松本銀造(松本)とその弟子(今田)ともとへ取材に訪れる。

松本は作品の制作過程を見せていくことになるが、それはまず「白虎拭き」という謎の作業からスタートする。その後も「しごみ笊」「二人鷹」「ひねりっこちゃん」などのワードが飛び出し、松本の造語のセンスが炸裂する。

最後の「組み立て」の作業の際、竹の紐を扱う松本の手際が意外とよく(その直前にはいろいろと手こずっている様子なのだが)、職人然としたふるまいに妙な説得力が感じられるところも好きなポイントである。

「銀造さん、これはなにに使うものなんですか?」
「それがようわからんのやねえ」

10.豆

親子3人(父親が板尾、母親が今田、娘がYOU)の夕食どき、YOUは嫌いな豆を両親が見ていない隙に捨てて食事を終え、部屋に戻る。すると、部屋には豆のかぶりものをした見知らぬ男がふたり(松本と浜田)。

「豆のモン」を名乗るふたりはYOUが豆を捨てたことを糾弾し、両親も呼びつけて「豆と日本人」というビデオを強制的に見せる。この昭和の教育ビデオのような映像が私のいちばん好きなところである。豆がいかに偉大なものかということが、こういうビデオにありがちなトーンの女性のナレーションで語られていく。松本の初監督作品『大日本人』に出てきたモノクロの記録映像を見たときは、このビデオのことを思い出したものだった。

「人類の起源には猿説と豆説があり、現在では豆説が有力となっています」

まとめ

以上が、『ダウンタウンのごっつええ感じ』で私が好きなコント10本である。

順位はつけられなかったが、あえて1位を選ぶなら、「お見舞い」か「日本の匠を訪ねて」のどちらかかな、と思う。そのときの気分によっても変わりそうだが。

紹介した作品以外にもおもしろいコントは大量にあるので、観たことがないという方はぜひDVDでチェックしてみてほしい。