超人気ジャンプ作家たちの原点!初期作品が読める短編集を紹介!

スポンサーリンク

『週刊少年ジャンプ』の有名漫画といえば何巻も続く連載作品がほとんどである。人気が出れば出るほど、出版社としては長く連載を続けてもらおうとするので、ある意味当然ではある。

しかし超人気漫画を手がけるジャンプ作家たちも、連載する権利を獲得する前にはたいてい読み切り作品を描いている。本誌での連載を夢見る駆け出し時代の短編漫画には、その後の長期連載作品とはまた違った味わいがある。

今回はそんな人気ジャンプ作家たちの読み切り作品を楽しめる短編集をいくつかご紹介したいと思う。好きな漫画家の初期作品を読んでみるきっかけにしてもらえれば幸いだ。

スポンサーリンク

『WANTED! 尾田栄一郎短編集』尾田栄一郎

『ONE PIECE』の作者・尾田栄一郎による短編集。第44回手塚賞準入選作にしてデビュー作の『WANTED!』や『ONE PIECE』のプロトタイプである『ROMANCE DAWN』など5編が収録されている。

いちばん新しい『ROMANCE DAWN』が21歳のときの作品で、そのほかはすべて10代のうちに描かれた作品である。『WANTED!』は西部劇風の世界が舞台だが、17歳の少年が西部劇とはまた渋い。若いうちからいろいろな物語に触れていたのだろうと想像できる。それはプロの作家には絶対に必要な経験だ。

『ROMANCE DAWN』はもちろんのことだが、『MONSTERS』も『ONE PIECE』と関連のある作品である。というのも、主人公リューマがスリラーバーク編に登場する人物なのだ。そういう意味でもこの短編集は『ONE PIECE』ファン必読の一冊といえる。

『ONE PIECE』のなかでも、たとえばガイモンというキャラクターのエピソードなどは独立した短編としても読めるもので、尾田栄一郎は短い作品を描く才能も間違いなくある漫画家だと思う。『ONE PIECE』以外の長編は書かないと公言されているようなので、『ONE PIECE』が完結したらぜひ短編漫画を描いていってほしい。できれば量産してほしい。

『狼なんて怖くない!! 冨樫義博短編集1』冨樫義博

『幽☆遊☆白書』や『HUNTER×HUNTER』で知られる冨樫義博の短編集。デビュー作『とんだバースディプレゼント』や第34回手塚賞準入選作『ぶっとびストレート』など6編が収録されている。

一風変わった野球ものである『ぶっとびストレート』を除くと、オカルトとラブ・コメディの要素の強い作品が詰めこまれており、その後のいくつかの連載漫画につながる原点がここにあることがわかる。ただし、冨樫作品は『HUNTER×HUNTER』しか知らないという方には、やや意外に感じられる作風かもしれない。

副題に「冨樫義博短編集1」とあるが、「2」が発売される日はいつか来るのだろうか。いまの冨樫義博が本気で短編漫画に取り組んだらどんなものが飛び出してくるのか、もし可能であるなら見てみたいものである(その前に『HUNTER×HUNTER』をきちんと完結させてくれなくては困るが)。

『ゴージャス★アイリン』荒木飛呂彦

『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦による短編集。第20回手塚賞準入選作でデビュー作の『武装ポーカー』や初連載作品『魔少年ビーティー』のパイロット版である同名作品など6編が収録されている。

収録作はどれもそれぞれに楽しいが、なんといっても『武装ポーカー』が出色の出来だと個人的には思う。西部劇の雰囲気、メインのふたりのキャラクター、ギャンブルものの緊張感、意外性のある結末と、ケチのつけようがない。当時の手塚賞の審査員から絶賛を受けたのも納得である。これで受賞当時20歳というのだから、天才というほかない。

荒木飛呂彦にはほかに『死刑執行中 脱獄進行中』という短編集もあり(タイトルが最高にかっこいい)、こちらはプロの漫画家としてある程度キャリアを積んでからの読み切り作品が収められている。『ゴージャス★アイリン』ともどもおすすめである。

『チクサクコール うすた京介短編集 』うすた京介

『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』や『ピューと吹く!ジャガー』で知られるうすた京介の短編集。第2回GAGキング特別賞『ザ★手ぬきくん対物酢御くんパァト1 』や第34回赤塚賞佳作『それゆけ!未確認飛行物体男』などが収録されている。

まず、冒頭に収録されているショートショート『ザ★手ぬきくん対物酢御くんパァト1 』が私は好きだ。もう完全にふざけているとしか思えない作品なのだが、ギャグ漫画なのだから笑えればなんでもいいわけで、そこをきちんと評価して賞を与えた当時のジャンプ編集部はえらい。

『それゆけ!未確認飛行物体男』 は作者が自身のルーツが集約されていると語る作品。「おれは強いぞ!」と力強く主張すると相手をやっつけることができる変なヒーロー「UFOマン」が主人公の変な漫画である。やたらと自分の大衆人気を気にしているUFOマンがなんだかかわいい。

そのほか『もうちょっと右だったらストライク!!」など連載作家となって以降の作品も複数収録されている充実の短編集となっている。

『鳥山明○作劇場VOL.1』鳥山明

『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』の鳥山明による短編集。デビュー作となった『ワンダー・アイランド』など『Dr.スランプ』の連載前や連載中の読み切り作品が収録されている。

鳥山明は最初から絵がうまかった、というのがまず出てくる感想である。はっきりとした線でパキパキと描かれるキャラクターや背景、小道具が読んでいてとても気持ちがいい。そしてどの作品も基本的にほのぼのとしており、格闘漫画になって以降の『ドラゴンボール』のほうこそが鳥山明にとっては異色なのだということがあらためてよくわかる。

のちに世界的な人気漫画家になる気配などまるでなさそうなころの作品群だが、これを読まずして鳥山明は語れない。『~VOL.2』および 『~VOL.3』 、あるいはシリーズ3冊の再編集版である『鳥山明 満漢全席 壹』『鳥山明 満漢全席 貮』はファン必携のアイテムである。

まとめ

以上、5作品を紹介した。

どの短編集にも言えることだが、収録されている作品はもとより、それらについて作者自身の回想録が読めるところも非常にうれしいポイントだ。執筆の経緯や当時の苦労話など、人気ジャンプ作家たちもさまざまな経験を経て現在の地位を築いたのだとわかるのが初期作品集の魅力のひとつといえるだろう。