読書初心者におすすめ!読みやすくておもしろい小説

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この記事では、読書初心者の方におすすめの小説を紹介している。読書に慣れていない方のため、以下の条件を満たしている作品にしぼってピックアップした。

  • 日本人作家の作品であること。
  • 文章が読みやすいこと。
  • 文庫本で手に入ること。
  • 本の長さが適度であること。

もちろん最大の条件は「おもしろい小説であること」だが、こればかりは主観の問題なので(「読みやすい」も主観だが)、私がおもしろいと思っているものを紹介するしかない点をご了承いただきたい。

※一部サムネイルが当該作品ではなく関連作品のものになっていますが、リンク自体は正常です。

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『GO』金城一紀

金城一紀の実質的なデビュー作にして、第123回直木賞を受賞した青春恋愛小説。

主人公の男子高校生・杉原は在日韓国人という設定である。彼と日本人のヒロイン・桜井との恋愛模様がメインのストーリーだが、人種差別も本作の大きなテーマとなっている。

差別問題を扱っているものの、小説の内容は重くない。というより、逆といっていい。文章は軽快かつユーモラスかつパワフルで、重たい問題を一蹴する迫力に満ちている。明るくさわやかな恋愛小説、青春小説として最後まで楽しむことができるはずだ。

メインとなる杉原や桜井を始め、主人公の父親や母親、友人の正一や加藤など、個性的なキャラクターが生き生きと描かれているのもこの作品の大きな魅力である。とくに父親(主人公にならって「オヤジ」と呼びたいところ)は愛すべきキャラクターで、なんならヒロインよりも強い印象を残すほどだ。

物語はとてもテンポよく進んでいくので、読書が苦手な方でも苦労せず最後まで読み通せるだろう。とりあえず手にとってみる一冊としておすすめである。

『銃とチョコレート』乙一

人気作家・乙一によるミステリ小説。

物語の舞台はヨーロッパのどこかの国。そこでは大富豪の財宝を盗み出す怪盗ゴディバと、彼を追いかける名探偵ロイズとの対決が世間を賑わせている。ロイズは国民のヒーローであり、主人公の少年リンツにとってもあこがれの人物だった。

そんなある日、リンツは父親の形見である聖書のなかから一枚の地図を発見する。どうやらそれは怪盗ゴディバの事件の鍵を握るものらしく、リンツは名探偵ロイズに手紙を書く。すると、ロイズがリンツのもとを訪ねてきて……という導入から、少年リンツの冒険の旅が始っていく。

少年の成長物語であり、痛快な冒険活劇であり、意外性に満ちたミステリでもあり、とさまざまな楽しみ方ができる小説となっている。

乙一の小説は基本的にどれも読みやすいが、そのなかでも『銃とチョコレート』は児童書として書かれているので、読書初心者にぴったりといえるだろう。

※乙一作品については、以下の記事で私のベスト5を選んでいるので、時間のある方はあわせてどうぞ。

乙一作品を全部読んだ男が選ぶおすすめ小説ベスト5

『トリツカレ男』いしいしんじ

いしいしんじによるファンタジックな純愛小説。

タイトルの「トリツカレ男」とは、主人公ジュゼッペのあだ名である。いったんなにかに夢中になると、まるでとりつかれたようにそれにかかりきりになってしまうため、周囲からそのような名前で呼ばれている。

オペラ、三段跳び、探偵ごっこ、昆虫採集、潮干狩り、刺繍、ハツカネズミなど、ジュゼッペはさまざまなものにとりつかれていく。このあたりの描写がじつにユーモラスで楽しい。ジュゼッペが愛すべき男であることがわかるし、彼を取り巻く人々の視線の優しさにもほっとする。

ある日、ジュゼッペは公園で風船売りの少女ペチカに出会い、あっというまに恋に落ちる。そう、ペチカに「トリツカレ」てしまうのだ。

ジュゼッペは全身全霊でペチカを愛するが、やがて彼女の心が深い悲しみにとらわれていることを知り……というのが本書のあらすじである。

なんといっても、愛する女性のため、ありとあらゆる手を尽くそうとがんばるジュゼッペの姿が愛らしい作品だ。わずか160ページほどのとても薄い本なので、忙しくて時間のない方にもおすすめである。

『西の魔女が死んだ』梨木香歩

梨木香歩のデビュー作である児童文学作品。第28回児童文学者協会新人賞、第13回新美南吉児童文学賞、第44回小学館文学賞と多くの賞を獲得している。

主人公は中学1年生の女の子まい。中学に入学してまもなく不登校となってしまったまいは、母親の提案により、田舎で暮らす祖母のもとでしばらく過ごすことになる。

この祖母がタイトルに出てくる「西の魔女」である。ファンタジーの世界に出てくるような魔法使いとは違うが、ちょっと不思議な力を持っていることは間違いない。

まいは祖母のもとで「魔女修行」に励むことになる。といっても、魔法を覚えるための修行というわけではない。

早寝早起きをし、掃除や洗濯をし、畑仕事をする。つまり、自分自身で生活していく力を身につけるための修行なのだ。修行を通してまいが心身ともに成長していく過程がこの作品の肝である。

読み終わったあとには、ちょっと背筋を伸ばして自分自身の生活を見直してみよう。そんな気持ちにさせてくれる小説だ。

『博士の愛した数式』小川洋子

小川洋子による小説で、 第55回読売文学賞受賞作、そして記念すべき第1回本屋大賞受賞作となった作品。

交通事故で脳を損傷し、記憶が80分しか持たなくなってしまった数学者の「博士」と、彼の新しい家政婦である「私」、そして「私」の息子である「ルート」。この3人の心温まる交流を、ほどよく抑制された筆致で描いた小説である。

記憶力を失った博士、という特殊な設定が目を引くが、個人的には、数字や数学を通じたコミュニケーションの描写がこの作品のいちばんの魅力だろうと思う。

中高生のうちにこの本を読んでいれば、数学を少しは好きになれたかもしれない。初めて読んだときには、そんな後悔にも似た気持ちになったものである。同じような文系読者は数え切れないほどいるに違いない。

名作、という言葉は長く(少なくとも数十年)読み継がれてきた作品にこそふさわしい言葉だと思うが、『博士の愛した数式』は現代の名作といっていいくらいの小説だと思う。

すでに多くの人に愛されている作品だが、未読だという方はぜひ読んでみてほしい。

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『ボッコちゃん』星新一

ショートショートの神様・星新一の作品集。

「短い、読みやすい、おもしろい」の三拍子がそろった星新一の作品群は、読書初心者にとっていわば宝石箱のようなもの。『ボッコちゃん』にはそんなショートショートの神様の傑作がなんと50編も収録されている。読めば必ずお気に入りの作品が見つかるはずだ。

ショートショートにはたいてい「意外なオチ」がついているが、これも読書初心者にはうれしいところではないだろうか。少なくとも私はある程度小説を読み慣れるまでは、意外なオチのあるものばかりを好んで読んでいた。「読んだ!」という実感を得やすかったのがよかったのだろう。

ひとつひとつの作品が非常に短いため、ここであらすじを書くわけにはいかない。いつまでも古びることのない名作の数々をぜひ自分の目と感性で楽しんでいただきたい。

『三毛猫ホームズの推理』赤川次郎

赤川次郎の代表作「三毛猫ホームズシリーズ」の第1作。

背は高いがイマイチ頼りない刑事・片山と、その飼い猫である「ホームズ」のコンビが活躍するユーモアミステリ「三毛猫ホームズシリーズ」。

「ホームズ」の名を冠していることからわかるように、このシリーズの探偵役は猫である。といっても、ホームズは人間の言葉を話すわけではなく、刑事である片山にあれこれとヒントをもたらして事件を解決に導いてくれるのである。

テンポのよい文章でライトに楽しめるシリーズではあるが、第1作である『三毛猫ホームズの推理』は大胆不敵なトリックが炸裂する本格的なミステリだ。軽やかな作風に油断していると、ミステリとして骨太さに面食らうことになるだろう。

1978年から始まったシリーズは、現在までになんと50巻以上発表されている。本作が気に入った方は、今後しばらく読むものには困らないだろう。

『夜市』恒川光太郎

第12回日本ホラー小説大賞を受賞した恒川光太郎のデビュー作。

女子大学生のいずみは、高校時代の同級生である裕司に誘われて、人ならぬものたちが怪しげな品物を売る不思議な市場「夜市」 の世界に連れこまれる。

夜市では、望むものはなんでも手に入るのだという。裕司は小学生のころに夜市に迷いこみ、そこで自分の弟と引き換えに野球の才能を買ったのだが、後年罪悪感にさいなまれ、今度は弟を買い戻すためにふたたび夜市へやってきたのだった。

不気味で怪しげで、しかしなんとも抗いがたい魔力に満ちた「夜市」の幻想的な雰囲気が、まずは魅力的な作品だ。そして、なんといっても、夜市に翻弄された兄弟の哀しくも美しいストーリーがすばらしい。

ホラーが好き、ホラーが苦手、ということに関係なく楽しめる作品だと思うので、ぜに手にとってみてほしい。

表題作『夜市』のほかに短編『風の古道』があわせて収録されている。

『我らが隣人の犯罪』宮部みゆき

国民的人気作家・宮部みゆきの初期の短編集。

表題作は第26回オール讀物推理小説新人賞を受賞した、宮部みゆきのデビュー作である。

新居に引っ越したはいいが、あまりにうるさい隣家の犬の鳴き声に悩まされる三田村家。そこで中学生の少年である主人公とその妹、そして仲のいい叔父の3人が犬の誘拐を企てるが、その計画の途中で隣人の思わぬ犯罪が露見する。

中学生の少年の語り口が楽しい、ユーモアあふれるミステリであり、一風変わったピカレスクものでもある。

宮部みゆきはとにかく圧倒的に小説がうまいので、ちょっと読めばすぐに主人公の境遇に共感しながら読み進めることができる点が読書初心者にはうれしい。丁寧に確実に読む者の心をつかんでくれる。

表題作のほか、やはり少年を主人公にした心温まるミステリ『この子誰の子』や、泣ける名作『サボテンの花』など5編が収録されている。人気作家の人気作家たる所以のわかる傑作短編集である。

まとめ

以上、9つの小説を紹介した。

読書初心者の方がさらに読書にハマるきっかけとなるような一冊が見つかれば幸いである。読んでみておもしろかった場合には、同じ作者のべつの作品を読んでいくのもいいだろう。